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ねこが眠っている。
マンチカンという種類の猫。特徴は脚が短い事、というマンチカンだったが、ペットショップのケージに貼られたプロフィールには「備考:足長」と書かれていた。
3月頃見かけたその子は、4月になっても、5月になっても売れ残り、どんどん値引きされていった。
確かに、普通の白い猫にしか見えなかった。日本猫(白)、と言って差し支えない普通の猫。ペットショップの狭く仕切られたスペースの中で、何故か風呂椅子が置かれ、そこによじ登って遊んでいた。しかもすぐに転げ落ちた。これはもしかして脚が長い事の弊害なのかもしれないと思ったが、聞いてみるとそうではないらしい。5月の5日、その子を買った。セゾンカードの日で5%オフだったからだ。小さい紙製の箱に入れて連れ帰った。
嬉しさが限界を超えると噛み付き、布団の中に入ろうとせず、必ず布団(私の体)の上に乗って寝た。撫でていると、最初はゴロゴロいってご機嫌なのに、気が付くと殺気を帯びていて、いきなり手に噛み付いて来るのでよく手が傷だらけになった。しかもかなり深い傷をつけてくるものだから、締切前などは利き手はなるべく使わずに反対のほうの手で撫でていた。しかしどちらにしろすぐに飽きてどこかへ行ってしまう、気まぐれな猫だった。
仕事中は押入れやら段ボールの上やらの、とにかく平面が好きで、ふわふわの猫用ベッドとかは受け付けない子だった。
額から目鼻あたりまでを覆う形で撫でられるのが好きで、頭をぐいぐいと手のひらに押し付けてきて、撫でを要求した。その内噛み付いて来るくせに、と思いながら、いつも長い長い時間撫でた。
今日はひどく静かだ、と思う。とても静かだ。
ねこが眠っている。
眠っている。
天国も神も信じないわたしは、生きている限りあの子のことを覚えていようと思う。それしかできない。
ごめんね、うちに来てくれて、一緒にいてくれて、ありがとう。
年中汚い部屋で悪かったね。
ありがとう。会えてうれしかった。

ねこは小さい。
人間である私よりはるかに小さい。あの小さい頭の中に入ってるってんだから、脳はさらに小さい、のだろう。
この片手で覆える小さい頭の中に感情があって、言葉にならないままの状態のかたまりがあって、ときにわかってあげられないことが申し訳ないなあと思う。
けものだものなと思いつつ、さっきからずっとねこをなでている。取り敢えず少し落ち着いたらしい。緩やかに寝息をたてている。
ここ数日具合が悪いのだということだけしかわからない。取り敢えずなでている。